今月のおすすめその七デザインハウス

年にない大雪で迎えた新年も1週間を過ぎ、ゆるゆると日常の勘を取り戻しつつあった日曜日の夕方。私は山形駅から100円循環バスに乗り、山形市の中心街、七日町へと向かいました。
本日の目的地である山形デザインハウスは、NPO法人山形県デザインネットワークが2003年より運営しているギャラリーを兼ねたお店で、県内ショッピングフロアの他、ホテルや飲食店、ギャラリーやサロンなど、各種施設の入ったビル「ナナビーンズ」の2階にあります。

山形デザインハウス入口

エスカレーターを上がると、さっそくデザインハウスへと入りました。
入口付近では、「おいしい食卓〜色を彩るうつわ〜」と題された企画展が開催中で、コーナーごとに色とりどりの飯椀、汁椀、箸、納豆鉢などが並べられていました。箸のコーナーには箸の上手な選び方、納豆鉢のコーナーには納豆の栄養に関する話題など、パネルによる豆知識の解説もあり、思わず足を止めてしまう楽しさです。

鋳物製品南陽市出身の芳武茂介氏デザインによる鋳物製品
鉄瓶増田尚紀氏デザインの鉄瓶(左:24,900円)とティポット(右:6,300円)
山正鋳造900年の伝統を受け継ぐ山正鋳造(山形市銅町)の製品

画展をひと通り見た後、私は改めてぐるりと店内を見渡しました。
最初に気になったのは、店の一番奥の棚でした。そこには、シンプルながら優しい曲線の鉄鉢や鉄皿など、芳武茂介氏がデザインした鋳物製品が展示されていました。
デザインハウスでは、それぞれの作品や製品の横に、それを手がけたデザイナーや工房のプロフィールが書かれた小さなパネルが置いてあるのですが、こんな時だけせっかちな私。誰かに聞いてみよう…と思い立って後ろを振り返ると、その思いを察知したスタッフの方がすぐに近づいてきて、芳武氏とそのお弟子さんでもあるデザイナーの増田尚紀氏、また両氏によるデザイン製品を製造している山正鋳造の概要を説明してくださいました。
私がこの日一番見たいと思っていた鉄瓶は、大きさもデザインも様々なものが、増田氏のデザイン製品の陳列棚にありました。内側に漆をかけた鉄瓶は湯に鉄分が溶け出すため、昔から鉄分補給に役立つとされていますが、錆びつきやすいのが難点。一方、内側がホーロー引きなったものは、わずらしいメンテナンスの必要がなく人気とのこと。
私は、一つ一つを眺めながら、お湯が沸いた時に鳴るシュンシュンという音と湯気を上らせながら部屋に佇む風景を想像し、手に取って持ち具合を確かめたりしました。今回は購入しませんでしたが、ますます鋳物に興味津々になりました。
>>山形鋳物工業団地協同組合ホームページ

青龍窯青龍窯(山形市平清水)の陶器   秋之野窯神保寛子氏(秋之野窯)の陶芸作品

形鋳物コーナーの近くには、青龍窯の陶器が並ぶ棚がありました。青龍窯は、山形市のシンボルである千歳山の南麓に位置する平清水にあります。平清水は私にとって、幼い頃に陶芸教室に参加した、思い出深い陶芸の里。中でも青龍窯のものは、自宅はもちろん、親戚や近所の家でも触れる機会の多い、馴染み深い焼物の一つです。
棚には、「梨青瓷(なしせいじ)」と並ぶ青龍窯の定番、「残雪」の酒器や茶器、マグカップなどがありました。身近すぎて、じっくりと眺めたことがなかったことに気づいた瞬間、目を止めたのは盃でした。豊満なフォルムと上品で、優雅な佇まい。まだらに掛かった白い釉薬は、淡い青みを帯びたマットなグレーで、春の山肌に残った雪をおもわせる景色です。土は千歳山から採取されているとのこと。私は春先の千歳山を思い浮かべながら、改めて、慣れ親しんできた陶器の美しさに見入ってしまいました。

じく陶芸コーナーにあった神保登・寛子ご夫妻の陶芸作品は、日本伝統の和絵具を用いて描かれたものらしい、自然な色と風合いが魅力的な作風でした。
私が特に気になったのは、寛子氏による「家(420円)」という小さなオブジェです。さまざまな形の家は、窓辺や棚にインテリアとして飾るのも良さそうですが、食卓や庭先に忍ばせれば、見つけた人を笑顔にすること間違いなしのキュートさ。人気商品と聞いて納得の商品でした。

木のあかり建具づくりの技術で創られた「木のあかり」(林久雄氏)   トンボ玉宗片典子氏によるトンボ玉のアクセサリー

工製品のコーナーでは、林久雄氏の「木のあかり」シリーズ製品に足を止めました。
スタッフの方の解説によれば、林氏は米沢市出身で、家業の建具製作の会社を引き継ぎ、建具の仕事をする傍ら、組子の技術をいかした照明作品を創り始めたのだそうです。伝統技術を用いた独特な造形は、和の空間にも洋の空間にも合いそうな現代的なデザインですが、米沢市の上杉神社で毎年2月に開催される雪灯篭祭りからインスピレーションを受けてつくられたとのこと。製作の経緯を聞いて、放たれる光の温かな秘密が、少しだけわかったような気がしました。

の後も、山形県内ゆかりのデザイナーや職人による家具や漆器、アクセサリーやおもちゃなどを順に見て回りました。天然の素材をいかしたもの。伝統的な技術を用いたもの。伝統的なデザインを受け継ぐもの。新しい技術を取り入れたもの。製作者たちの想いと挑戦の結晶で製品たちは、それぞれが違った魅力を持ち、しかしながらどれも美しさと力強さに満ちていて、こんなにも素敵なものたちが近くで生まれていることに嬉しくなりました。

マットハチ蜜の森キャンドルの蜜ロウソク(上)と
デザインユニットF/style+穂積繊維工業のマット(下)
  野口店長作品やデザイナーについて丁寧に解説してくださった野口さん

ームページを見て以来気になっていた、東北芸術工科大学出身の女性2人によるデザインユニット F/style デザインのマットも見せて頂きました。
そしてこの時、蜜ロウソクのある棚に気がつきました。実は、ハチ蜜の森キャンドルの安藤さんに、以前朝日町でお会いしたことがありました。しかし、安藤さんがつくられているキャンドルがどのようなものなのかは、知らずにいました。円錐や四角錐、円柱や角柱、六角柱など、さまざまな形の蜜ロウソクは、それぞれ赤い紙で包まれ、表にはハチのイラストの印刷されたシールが貼ってありました。心を込めてつくったものを、大切に届けようとする想いが感じられるパッケージです。
私は、ジャム用のスプーンとおいしいジャムを送ろうと思っていた友人宛の贈り物の中に、2つの蜜ロウソクを加えることにし、円錐と六角柱の蜜ロウソクを購入しました。そして、親切にしてくださったスタッフの方に挨拶をし、店を後にしました。

形デザインハウスでは、オンラインショッピングのできる充実したホームページが運営されており、ほしい商品を取り寄せることも、あらかじめ商品を調べてからお店へ足を運ぶこともできます。
また、山形デザインハウスのあるナナビーンズの5Fには、「やまがた伝統こけし館」があります。おすすめの立ち寄りスポットですよ。

(2005年1月10日 探険隊員:ヌータオ)

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山形初市
探険隊コラム

子供たちといっしょに、自分の町のお気に入りを地図に描いてみた。名付けてSU・MAP大作戦。SUは、「好き」「すてき」「素顔」の「す」。飾らずそのまま、ぶっつけ本番。方位はおかまいなし、縮尺もおかまいなし。紙の大きさも足りなくなったらもう一枚紙を付け足す。それでも足りなくなったらまた付け足せばいい。子供たちはどんどん描き進める。一本の道だけが長〜く伸びる絵があったり、公園の中だけすごく細かく描かれた絵もある。帰り道、あそこからはケーキの匂いがする。ここには猫がたくさんいる。狭い道を通りぬけるスリル。冬はツララが特大になる秘密の道。神社に繋(つな)がる空き地は他となんか雰囲気が違う。子供たちは町の楽しさを知っていて、あちこちが自分のテーマパーク。だから、お父さんと散歩をする道もお父さんの地図とは違う絵になる。
方位の北を上にして描いている子は、誰もいない。自分の意識の中で、自分が進む方向が上になって描かれている。こういう地図が僕は好きだ。どういうふうに子供たちが町を歩き回っているかを感じる事ができて楽しくなる。
大人もSU・MAPやってみようよ。小学生だったころの町を思い出して描いて見ませんか。今の町の地図を描いて見ませんか。細かな町の襞(ひだ)を見つけることができるかもしれません。季節の変化を思い出すかもしれません。子供たちの地図のように楽しいMAPを作れると思います。だって僕ら大人も、昔は子供だったんだから。

関連リンク

福島さん(有)ライブ設計室
東北芸術工科大学 非常勤講師
福島 茂良さん