ゆったりと味わえる蔵の店茶呑み処 いわぶち

盆も過ぎ、山形市内の小学校では新学期を迎えたというのに、繁華街を行く人々の服装はまだまだ夏真っ盛り。ノースリーブやキャミソール姿の女性達が目につきます。
この日訪れた茶呑み処 いわぶちは、七日町の通りを文翔館より南へ200mほど行ったところにある老舗店、岩淵茶舗に併設してつくられたお店です。私たち3人は初めての訪問でしたが、茶舗の方は馴染みのある店ということで、店内で待ち合わせることにしました。
店内は、カウンター席の他にテーブル3つのこぢんまりとした造り。大きな金文字で「茶」と書かれた看板が印象的な空間です。
全員が席についたところで、3人そろってメニューを見ると、表も裏も、上から下まで見事なまでの緑茶づくし。驚きながらも、「さすがお茶屋さんだね」と大喜びした私たちは、ご主人と相談しながら、まずは抹茶と福岡八女茶(煎茶)、宇治玉露を注文しました。

岩淵茶舗の東側を少し奥に入ったところに下がる白い暖簾が入口
七日町通りにもかかわらず、店内は静かで落ち着ける雰囲気
「抹茶(菓子付き)」(600円)
干菓子に続いて漉された抹茶の入ったお茶碗と茶筅、お湯が運ばれてくる

茶を頂くことにしたのはノアールです。お菓子は季節の和菓子(4種類)、干菓子(和三盆糖と抹茶衣をかけた瓦煎餅)のどちらかを選べます。今回ノアールは、干菓子を選びました。
とても嬉しいことに、いわぶちさんでは自分で抹茶を点てて飲む!ことが出来ます。勿論、ご主人が点てて下さる一服は申し分なく美味しくて、楽しめます。けれども、一人分の抹茶を漉して茶碗に入れるところから茶筅の振り方まで、ご主人が付きっきりで丁寧に教えて下さいますから、初心者マークの方でも大丈夫、全く心配ありません。自分で点てた一服はきっと日本人で良かったぁ!と思わせてくれる筈です。是非、お試し下さい。
口の中ですぅっと溶けていく干菓子の甘味を味わったすぐ後に、抹茶をひと口。あぁ〜幸せ。お茶の美味しさが口の中いっぱいに拡がります。ノアールの誘いに乗って、Sakuraとヌータオも干菓子と抹茶をひと口ずついただきました。外の暑さを忘れるような爽快な抹茶の苦みと旨みに、私たちは心が穏やかになっていくのを感じていました。
ノアールは茶道歴○年ですが、只今お稽古はお休み中。久しぶりの「お薄」一服に茶室が恋しくなり、早くお稽古を再開しなくては、と意欲を燃やし始めました。ご主人とノアールの話を聞いたSakuraとヌータオも、すっかり茶道の世界に興味津々。次はお茶室で、との思いを強くしました。
お茶を通して“和の心”を伝えてくれる素敵な空間に流れるのは、バロック音楽です。ホッとできるお茶のひととき、お薦めです。

ノアールは「久しぶりで嬉しい」と言いながら美しいお点前を披露

「おいしい入れ方をお客さんに教えるのもお茶屋の仕事です」と語るご主人

露と煎茶には、和菓子がつきます。Sakuraは月と蜻蛉をあしらった羊羹を、ヌータオは葡萄をかたどった生菓子を選びました。少しして、小さな急須と茶碗、生菓子がお盆にのせられて目の前に並びました。
ご主人によれば、日本茶はお湯の温度と時間を加減することで、自分の飲みたい味をつくり出せる世界で唯一のお茶なのだそうです。 私たちがそれぞれ好みの味を伝えると、ご主人はお茶の入れ方とちょうど良いお湯の温度、そしてお湯を急須に注いでから茶碗に注ぐまでの時間の目安について、丁寧に説明してくださいました。
私たちは、手順に従ってお湯の温度が下がるのを待ち、お茶の葉が開くのを待つ間をワクワクしならが待ちました。 そして、お待ちかねのご主人の合図。まずは煎茶を注いだSakuraがひと口いただきました。「いつも飲んでいるのとぜんぜん違ーう」との感想に、ノアールとヌータオも便乗してひと口。「甘みが違う」と私たちは声をそろえました。
続いて、ヌータオが玉露を茶碗に注ぎました。想像していたよりも黄色みがかっていて、小さい茶碗にちょうど良く、煎茶よりも量も少なめです。口に含んでみると、ふわーっとなんともいえないお茶の味がしました。Sakuraとノアールもひと口ずつ飲み、「お茶の旨みって奥深い!」と感激することしきり。
普段お茶を飲む機会が多いというSakuraは、今回の岩渕茶舗さんでいただいた玉露の口当たりと後味が絶妙で忘れられなく、さっそく人に感想を伝えてしまったほどでした。

初めにメニューを見た時に、豊富な種類が用意されたスイーツにも惹かれていた私たちは、お茶を一通り楽しんだ後、ノアールは「抹茶ソフトクリーム白玉あん付」(500円)、Sakuraはこしあんと粒あん、黒蜜か白蜜かなどを好みで選べる「クリームあんみつ」(650円)、ヌータオは「ぜんざい(白玉入り)」(550円)を注文しました。 抹茶の香り高いアイスクリームやソフトクリーム、やさしい甘さのあんは、さすがお茶屋さんのスイーツといった感じで、私たちは大満足でした。いずれも季節に関係なく食べたくなる一品です。

「福岡八女茶(煎茶)(和菓子付き)」(700円)
「宇治玉露(和菓子付きき)」(900円)
急須のふたにある、蒸気抜きの小さな穴は 、注ぎ口側にくるようにふたをします。急須のお湯が対流して茶葉が開き、 お茶の成分が均一に浸出されるのだそうです(豆知識)。

「クリームあんみつ(抹茶又はバニラ)」(650円)

深いお茶の世界に触れ、さらにスイーツとともに至福の時間を過ごしながら、私たちはご主人からいろいろな話を聞くことができました。岩淵家は江戸時代には、刀鞘をつくる職人としてこの地に居を構えていたこと。その後、茶店を開くことになり、新しい屋号をつくったこと。そして、家に大切に保管されている博覧会の本なども見せて頂き、私たちは江戸時代から明治、大正、昭和へと姿を変えていった城下町やまがたの姿に、改めて思いを馳せました。
お湯がほどよい温度になるまでの時間。
茶葉が開くまでの時間。
お茶が茶碗へ最後の一滴まで注がれる時間。
ご主人は、おいしいお茶のいれ方とともに、ゆったりと流れる時間の楽しみ方を教えてくださったように思います。

(2005年8月21日 探険隊員:ノアール、Sakura、ヌータオ)

併設の岩淵茶補では、お茶や茶道具の購入はもちろん、抹茶ソフトクリームのテイクアウトもできます

 

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榮玉堂

馬見ヶ先川の河川敷に人々が集まり、大鍋に里いも、牛肉、こんにゃく、ねぎ、ごぼうなどを入れ、醤油で味をつけていただく「いも煮」。朝晩の風を心地よく感じられる頃、山形はこの季節を迎えます。
スーパーマーケットには、鉄鍋と薪が準備された「いも煮会セット」がお目見えし、コンビニエンスストアには薪が積まれ販売されるようになります。山形の方には、極一般的な光景でありますが・・・海辺育ちの私には、河原に人が集う機会がなく、行為自体が不思議でしかたなかった事を覚えています。
山形のいも煮の起源は、丹精こめて育てた稲が台風や冷害、病害虫などにもめげずに見事に身を結んだ事を祝う行事で、田の神を山へ送り返すとき、山頂で新米の餅と芋煮を食べて収穫に感謝した名残かもしれないと言われます。そして里では神のいない神無月を過ごしたようです。
現在では、あらゆる業種の人々が、家族や友人、職場などでグループを作り、憩いのひとときを過ごす馴染み深い行事となっていますが、このように古来の背景を背負った行事でもあるようです。

灯蔵(蔵 オビハチ)スタッフ
三浦いづみさん